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歯を多く失ってしまった方や総入れ歯に悩みを抱えている方にとって、治療の選択肢を知ることはとても大切です。「オールオン4」は、最少4本のインプラントで片顎すべての人工歯を支えるインプラント治療のひとつで、手術当日から仮歯で噛めるようになるという特徴があります。
この記事では、オールオン4の仕組みやメリット・デメリット、費用相場、治療の流れ、寿命、他の治療法との比較まで、検討に必要な情報を幅広く解説します。オールオン4とはどのような治療なのか、基本から順を追って見ていきましょう。
オールオン4は、上顎または下顎のどちらかに最少4本のインプラント体を埋入し、その上に連結した10~12本分の人工歯を固定するインプラント治療です。全歯を失った方や、残存歯のほとんどが抜歯を必要とする状態の方を対象としており、従来のインプラント治療で必要とされていた本数を大幅に減らせる点が大きな特徴です。
オールオン4では、前歯部に2本のインプラントを垂直に、臼歯部に2本のインプラントを最大45度の角度をつけて斜めに埋入します。この「傾斜埋入」と呼ばれる手法により、奥歯側の骨が少ない部位を避けながら長いインプラントを使用でき、骨とインプラントの接触面積を広く確保することが可能です。
傾斜埋入によってインプラントへの力の配分が均等になり、4本でも片顎12本分の人工歯を安定して支えられる構造を実現しています。上顎では上顎洞(副鼻腔の一部)、下顎では下歯槽神経といった解剖学的な制約を回避しやすくなることも、この手法の利点のひとつです。
「All-on-4」という名称は、世界有数のインプラントメーカーであるノーベルバイオケア社が開発した治療コンセプトの登録商標です。同社のインプラント製品を使用した場合にのみ「オールオン4」という名称が正式に使用されます。他のインプラントメーカーでも同様の治療コンセプトを採用した製品がありますが、それらは「プロアーチ」など別の名称で呼ばれています。
治療を検討する際には、使用されるインプラントメーカーを確認しておくとよいでしょう。メーカーによって製品の特性や長期的なサポート体制が異なるため、歯科医院に事前に尋ねておくことをおすすめします。
参照元:Nobel Biocare「All-on-4治療コンセプト」(https://www.nobelbiocare.com/ja-jp/all-on-4-treatment-concept)
オールオン4は、多くの歯を失った方が噛む機能と見た目を回復するための治療法として、いくつかの明確な利点を持っています。ここでは代表的な6つのメリットを整理します。
一般的にインプラント治療で片顎すべての歯を回復しようとすると、8〜14本のインプラントが必要になるケースもあります。一方、オールオン4は最少4本のインプラントで片顎全体をカバーするため、インプラント1本あたりの材料費や手術の範囲が抑えられ、結果としてトータルの費用や身体への負担を軽減できます。
オールオン4の大きな特徴のひとつが「即時負荷」と呼ばれる仕組みです。傾斜埋入によってインプラントの初期固定が十分に得られた場合、手術当日に固定式の仮歯を装着することが可能です。柔らかいものであれば手術当日の夕食から食べられるケースも多く、歯がない期間を極力短くしたい方にとって大きなメリットといえます。
歯を失ったまま時間が経つと顎の骨がやせていきます。通常のインプラント治療では骨量が不足している場合にサイナスリフトやGBR(骨誘導再生)といった骨を増やす手術が必要になることがあります。オールオン4は骨が残っている部分を選んで傾斜埋入する設計のため、骨造成手術が不要になるケースが多く、追加手術の費用や治癒期間を減らせる可能性があります。
オールオン4で装着する人工歯はインプラントにしっかりと固定されるため、総入れ歯のようにずれたり浮いたりすることがありません。噛む力が直接顎の骨に伝わる構造なので、固いものも含めて幅広い食事を楽しむことが期待できます。厚生労働省の委託事業による報告でも、インプラント支持固定式の補綴装置は一般的な総入れ歯と比較して咀嚼機能や患者満足度に優れるとされています。
オールオン4の人工歯は、歯の形状・色・歯肉のボリュームまでを含めた設計で作られます。そのため天然歯に近い自然な見た目の口元を実現しやすく、笑顔や会話に自信を取り戻す効果が期待できます。歯並びや歯の色についても要望に応じたカスタマイズが可能です。
総入れ歯は歯ぐきに吸着させて使う構造のため、食事中や会話中にずれたり外れたりすることがあります。オールオン4はインプラントで人工歯を固定する方式なので、取り外しの手間がなく、食事・会話・歯磨きの際もずれを気にせず過ごせます。
上記以外にも、下記のような効果が見込めます。
参照元:厚生労働省 委託事業「歯科インプラント治療のためのQ&A」(https://www.mhlw.go.jp/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/iryou/shika_hoken_jouhou/dl/01-02.pdf)
メリットの多いオールオン4ですが、すべての方に適した万能な治療法というわけではありません。治療を検討する上で事前に理解しておきたいデメリットやリスクを確認しましょう。
オールオン4は健康保険が適用されない自由診療です。片顎あたり200万〜400万円程度が一般的な相場で、上下両顎で行う場合はさらに費用がかかります。保険適用の総入れ歯(3割負担の場合は片顎で2〜3万円程度)と比較するとかなり高額な治療となるため、経済面での計画が必要です。ただし、確定申告時に医療費控除の対象として申告できるため、税負担を軽減できる可能性があります。
オールオン4は片顎すべての歯を人工歯に置き換える治療です。そのため、まだ使える健康な歯が数本残っている場合でも、治療を進めるには抜歯が必要になります。残存歯を活かしたい方にとっては大きな判断ポイントとなるため、本当にすべて抜歯すべきかどうかは担当医とよく相談することが重要です。
インプラント周囲炎とは、インプラントの周囲の歯ぐきや骨に細菌感染による炎症が起こる病態です。天然歯の歯周病と似た症状ですが、インプラントには天然歯にある防御機能(歯根膜)がないため、進行が早くなる場合があるとされています。日々のセルフケアと歯科医院での定期メンテナンスを怠ると、最悪の場合インプラントが脱落するリスクもあるため、治療後のケアがとても重要です。
オールオン4の上部構造(人工歯の部分)はすべての歯が連結された一体型の構造です。そのため、1か所が欠けたり割れたりした場合でも、全体を取り外して修理や作り直しが必要になることがあります。特に歯ぎしりや食いしばりの癖がある方は上部構造への負荷が大きくなりやすく、ナイトガード(就寝時用マウスピース)の使用が推奨されるケースもあります。
オールオン4は外科手術と補綴(人工歯の設計・作製)の高度な技術を組み合わせた治療のため、すべての歯科医院で対応しているわけではありません。専用のCT設備やサージカルガイドの作製環境、経験豊富な歯科技工士との連携体制が求められます。通院先が限定される可能性があることも、事前に考慮しておきましょう。
参照元:国民生活センター「あなたの歯科インプラントは大丈夫ですか」(https://www.kokusen.go.jp/pdf/n-20190314_1.pdf)
オールオン4は自由診療であるため、歯科医院ごとに価格設定が異なります。ここでは一般的な費用の目安と、内訳の考え方を整理します。
オールオン4の一般的な費用相場は以下のとおりです。使用するインプラントメーカーや上部構造の素材、追加処置の有無によって変動するため、あくまで目安として参考にしてください。
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| 治療範囲 | 費用の目安 |
|---|---|
| 片顎(上顎または下顎) | 約200万〜400万円 |
| 上下両顎 | 約400万〜800万円 |
オールオン4の費用には、一般的にカウンセリング・CT撮影などの精密検査、インプラント体(4〜6本分)、手術費用、仮歯の製作・装着費、そして最終的な上部構造(人工歯)の製作費が含まれます。歯科医院によっては静脈内鎮静法や術後のメンテナンス費用が別途かかることもあるため、見積もりの段階で「何が含まれていて、何が別料金なのか」を明確にしておくことが大切です。
上部構造に使用する素材によって費用は大きく変わります。主な素材としてはアクリルレジン(プラスチック系)、ハイブリッドセラミック、ジルコニアなどがあります。アクリルレジンは比較的安価ですが摩耗しやすく、数年ごとに作り替えが必要になることがあります。一方、ジルコニアは耐久性・審美性に優れていますが、初期費用が高くなる傾向があります。長期的な費用対効果を踏まえて素材を選ぶことが重要です。
オールオン4の費用を少しでも抑えるためには、複数の歯科医院でカウンセリングを受けて見積もりを比較することも有効です。また、デンタルローン(歯科治療専用の分割払い制度)を利用すれば、月々の支払い額を抑えながら治療を受けることもできます。
さらに、オールオン4は医療費控除の対象となります。1年間に支払った医療費の合計が10万円を超える場合、確定申告を行うことで所得税の一部が還付される仕組みです。領収書や明細書は大切に保管しておきましょう。
参照元:国税庁「医療費控除の対象となる歯の治療費の具体例」(https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shotoku/1128.htm)
オールオン4の治療は、手術当日だけで完結するものではありません。事前の検査・計画から最終的な人工歯の装着まで、複数のステップを経て進みます。全体像を把握しておくことで、安心して治療に臨めるでしょう。
まず歯科医師とのカウンセリングで、現在のお口の状態や治療に対するご希望を確認します。その後、CT撮影や口腔内スキャンなどの精密検査を行い、顎の骨の量や密度、神経や副鼻腔の位置関係を三次元的に把握します。全身の健康状態についても問診や血液検査で確認し、オールオン4が適応かどうかを総合的に判断します。
精密検査のデータをもとに、専用のソフトウェアでインプラントの埋入位置・角度・深さをシミュレーションします。最終的な歯並びまでデジタル上で設計できるため、手術前に仕上がりのイメージを共有することも可能です。治療計画が決まったら、費用・期間・リスクについて十分に説明を受け、納得した上で同意書にサインします。
手術当日はまず血圧測定や問診で全身状態を確認した後、局所麻酔を施します。手術に対する恐怖心が強い方には静脈内鎮静法(点滴で意識をうとうとさせる方法)を併用する歯科医院もあります。残存歯がある場合は抜歯を行い、続いて計画どおりの位置にインプラントを埋入します。インプラントの固定が十分に得られれば、当日中に仮歯を装着して帰宅できます。手術時間はケースにもよりますが、片顎で1〜3時間程度が一般的な目安です。
手術後はインプラントが顎の骨としっかり結合するまで、4〜6か月程度の治癒期間を設けます。この間は仮歯で過ごしますが、柔らかいものを中心に食事は可能です。骨との結合が確認できた段階で最終的な上部構造(人工歯)の型取り・製作に入り、噛み合わせの調整を経て装着となります。通院回数は歯科医院や症例によりますが、全体で10〜15回程度が目安とされています。
参照元:日本口腔インプラント学会「口腔インプラント治療指針2024」(https://www.shika-implant.org/shika/wp-content/uploads/2024/03/shishin2024.pdf)
オールオン4を検討する際には、他の治療法との違いを理解した上で比較検討することが大切です。ここでは代表的な3つの選択肢との違いを整理します。
総入れ歯は歯ぐきに吸着させて使う取り外し式の装置です。保険適用で費用を大幅に抑えられる点は大きなメリットですが、噛む力は天然歯の2〜3割程度に低下するとされ、食事中のずれや異物感を感じやすい面があります。一般的な寿命は5〜7年で、顎の骨の変化に合わせて定期的な作り直しが必要です。一方、オールオン4はインプラントで固定されるため噛む力が強く、ずれや異物感が少ないのが特徴ですが、外科手術が必要で費用も高額になります。
通常のインプラント治療で片顎すべての歯を回復する場合、8〜14本のインプラントを1本ずつ埋入し、それぞれに人工歯を装着します。骨量が不足している部位では骨造成手術が追加で必要になることもあり、治療期間は1〜2年、費用も片顎で480〜960万円程度になるケースがあります。オールオン4は最少4本のインプラントで対応できるため、手術回数・治療期間・費用のいずれも抑えやすい構造です。ただし、個々の歯を独立して修理・調整できる通常のインプラントに対し、オールオン4は一体型の上部構造であるため、部分的なトラブル時の対応方法が異なります。
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| 比較項目 | オールオン4 | 通常のインプラント | 総入れ歯 |
|---|---|---|---|
| インプラント本数(片顎) | 4〜6本 | 8〜14本 | なし |
| 費用の目安(片顎) | 約200〜400万円 | 約480〜960万円 | 約2〜3万円(保険適用) |
| 手術当日の仮歯 | 多くの場合可能 | 通常は不可 | 手術なし |
| 噛む力の回復度 | 天然歯に近い | 天然歯に近い | 天然歯の2〜3割 |
| 一般的な寿命目安 | 15〜20年以上 | 15〜20年以上 | 5〜7年 |
| 保険適用 | なし(自由診療) | なし(自由診療) | あり |
オールオン6は、オールオン4の配置に加えて中間部に2本のインプラントを追加し、計6本で上部構造を支える治療法です。インプラントの本数が増える分、1本あたりにかかる負荷が分散されるため、長期的な安定性に優れるとされています。
一般的に、顎の骨が十分に残っていてコストを抑えたい方にはオールオン4、骨密度が低い方や噛む力が強い方、より高い耐久性を求める方にはオールオン6が向いているとされています。どちらを選ぶかは顎の骨の状態や噛み合わせの力などを踏まえた総合判断が必要なので、担当医と十分に相談してください。なお、骨が極端に少ない場合はザイゴマインプラント(頬骨にインプラントを固定する方法)という選択肢が検討されることもあります。
参照元:厚生労働省 委託事業「安心してインプラント治療を受けるために」(https://www.mhlw.go.jp/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/iryou/shika_hoken_jouhou/dl/01-03.pdf)
高額な治療であるだけに、「何年くらいもつのか」は多くの方が気になるポイントです。オールオン4の寿命に関する一般的な目安と、長く使い続けるためのポイントを確認しましょう。
オールオン4に使われるインプラント体(チタン製のネジ部分)は、材質的には半永久的に使用できる耐久性を持っています。臨床的にはインプラント全体の10年累積残存率がおよそ90%とされており、適切なメンテナンスを続ければ15〜20年以上は安定して使い続けられるケースが多いと報告されています。20年以上使用できた症例も珍しくありません。
一方、上部構造(人工歯の部分)はインプラント体よりも寿命が短くなりがちで、素材や使用状況によっては数年〜10年程度で修理や作り替えが必要になることがあります。総入れ歯の一般的な寿命が5〜7年であることを考えると、オールオン4は長期的な費用対効果に優れた治療法といえるでしょう。
オールオン4の寿命を大きく左右する要因は、喫煙、口腔内の清潔さ、噛み合わせのバランス、そして全身の健康状態の3つです。セルフケアが不十分で口腔内に細菌が繁殖すると、インプラント周囲炎が進行して骨が溶け、インプラントの脱落につながります。また、歯ぎしりや食いしばりの癖は上部構造やインプラント体への過度な力を生み、破損や骨吸収のリスクを高めます。さらに、糖尿病は血流の悪化や免疫力の低下を通じて、インプラント周囲の組織回復を妨げることが知られています。特に喫煙者は、非喫煙者と比較してインプラント喪失のリスクが2〜3倍に高まるとされています。
オールオン4を長持ちさせるためには、毎日のセルフケアと歯科医院での定期検診を欠かさないことが最も重要です。歯ブラシに加えて、デンタルフロスや歯間ブラシを使ってインプラント周囲の清掃を丁寧に行いましょう。定期検診では歯周ポケットの深さやインプラント周囲の骨の状態、ネジの緩み、噛み合わせのチェックなどを行います。検診の頻度は3〜6か月に1回が一般的です。
歯ぎしりや食いしばりの自覚がある方は、ナイトガードの使用も検討してください。また、喫煙はインプラントの寿命を大幅に縮める要因のひとつとされているため、可能であれば禁煙を心がけることが望ましいといえます。
参照元:厚生労働省 委託事業「歯科インプラント治療指針」(https://www.mhlw.go.jp/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/iryou/shika_hoken_jouhou/dl/01-01.pdf)
オールオン4はすべての方に適した治療ではなく、お口や全身の状態によって適応が異なります。自分に合う治療かどうかを判断するための目安を確認しましょう。
以下のような方は、オールオン4の適応となりやすいケースです。
一方で、以下のような方はオールオン4の治療を受けられない可能性があります。
いずれの場合も最終的な判断は精密検査を経て行われますので、気になる方はまず歯科医院でのカウンセリングを受けてみることをおすすめします。
参照元:日本歯周病学会「歯周病患者における口腔インプラント治療指針およびエビデンス2018」(https://minds.jcqhc.or.jp/summary/c00497/)
オールオン4は高額で外科手術を伴う治療です。「近所にあるから」「安いから」という理由だけで歯科医院を決めると、後悔につながる可能性があります。ここでは一般的に確認しておきたいポイントを整理します。
歯科医院を選ぶ際は、以下の5つの観点を参考にしてください。できれば3か所以上の歯科医院でカウンセリングを受けて比較検討することをおすすめします。
提案された治療計画に疑問や不安がある場合は、別の歯科医院でセカンドオピニオンを求めることも有効です。オールオン4が本当に自分に合った治療法なのか、他の選択肢(通常のインプラント、オールオン6、インプラントオーバーデンチャーなど)はないのかを、複数の専門家の意見をもとに判断することで、後悔のない選択ができるでしょう。セカンドオピニオンに対応している歯科医院も増えていますので、遠慮なく相談してみてください。
参照元:厚生労働省 歯科保健医療情報収集等事業(https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/iryou/shika_hoken_jouhou/index.html)
日本歯科大学歯学部卒業ののち、同大学附属病院の矯正歯科にて勤務。現在は矯正を軸として、予防中心の目白ヶ丘デンタルクリニック・矯正歯科を開業。
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