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近年は歯科医療の進歩により、抜歯と同じ日にインプラント体を埋入できるケースが増えています。この術式は「抜歯即時インプラント」と呼ばれ、従来法に比べて治療期間や手術回数を抑えられる治療法として注目を集めています。
ただし、骨や歯ぐきの状態など一定の条件を満たす必要があり、すべての症例で選択できるわけではありません。本記事では、抜歯即時インプラントの仕組みやメリット・デメリット、適応条件、治療の流れ、費用相場、歯科医院選びの判断軸まで、検討前に押さえておきたい情報を整理してご紹介します。
抜歯即時インプラントは、文字通り「抜歯と同じタイミング」でインプラント体を埋め込む治療法です。従来のインプラント治療と何が違い、なぜ近年になって普及してきたのかを、まず基本的なところから整理していきます。
歯を抜くと、歯槽骨(しそうこつ:顎の骨のうち歯が生えている部分)には抜歯窩(ばっしか:歯が生えていた穴)と呼ばれる空洞ができます。抜歯即時インプラントとは、この抜歯窩に対して、抜歯したその日のうちにインプラント体を埋入する術式のことを指します。
状態が良ければ手術当日に仮歯まで装着することもあり、患者さんの治療負担を抑えながら、歯がない期間を短くできるのが大きな特徴です。前歯部のように見た目への影響が大きい部位で選ばれることが多く、骨や歯ぐきの条件が揃った症例で適用される傾向があります。
従来のインプラント治療では、抜歯をしたあと3〜4ヶ月ほど時間を置き、抜歯窩の組織がある程度治癒してからインプラント体を埋入するのが一般的でした。これは、抜歯で組織が傷ついている部位にすぐインプラントを埋め込むと炎症が起こり、インプラント体と顎の骨が強固に結合する「オッセオインテグレーション」が得られにくいのではないか、と考えられていたためです。
そのため、治療開始から最終的な人工歯の装着まで、トータルで10ヶ月前後を要するケースが多くありました。抜歯即時インプラントは、この治癒待ちの期間を大幅に圧縮できる点で、従来法とは設計思想が大きく異なる術式です。
近年の研究では、抜歯後の治癒機転(ちゆきてん:骨や歯ぐきが自ら治ろうとする反応)を上手に利用することで、むしろインプラント体と顎の骨の結合が促進されるという報告が増えてきました。抜歯直後の組織は治癒に向けた活発な反応を起こしている時期であり、このタイミングでインプラント体を埋入すれば、骨の再生力をそのまま活用できるという考え方です。
こうした臨床的な裏付けが積み重なってきたことで、適応条件を満たす症例については抜歯即時インプラントを第一選択とする歯科医院も少なくありません。インプラント治療の選択肢を広げる術式として、確実に普及が進んでいる治療法と言えるでしょう。
参照元:公益社団法人 日本口腔インプラント学会(https://www.shika-implant.org/)
抜歯即時インプラントには、治療期間や身体的負担、見た目の維持など、複数の側面でメリットがあります。代表的な6つの利点を順番に整理していきます。
抜歯即時インプラントの最大の特長は、治療期間を大きく圧縮できる点にあります。従来の抜歯待時埋入では、治療開始から人工歯装着までおおむね10ヶ月前後を要していましたが、抜歯即時インプラントの場合は4〜6ヶ月程度で完了するケースも珍しくありません。仕事や家事で忙しい方や、できるだけ早く見た目を回復させたい方にとって、選択肢として検討する価値の大きい術式です。
通常のインプラント治療では「抜歯」と「インプラント体の埋入」が別々の日に分かれるため、外科処置が2回必要になります。一方、抜歯即時インプラントは抜歯と埋入を同じ日に行うため、外科手術は基本的に1回で完了します。手術回数が減ることで、麻酔や術後の安静期間など、患者さんが拘束される時間を抑えられる点は大きな利点です。
歯を失った歯槽骨は、噛む刺激がなくなることで代謝が落ち、徐々に痩せていきます。これを骨吸収と呼びますが、放置するとインプラントを支えるための骨量が不足し、後から骨造成といった追加処置が必要になるケースもあります。抜歯直後にインプラント体を埋入する抜歯即時インプラントなら、骨に刺激を与え続けられるため、骨吸収を最小限に抑えやすいというメリットがあります。
骨が痩せると、その上に乗っている歯ぐきも一緒に下がっていきます。特に上顎前歯のように見た目への影響が大きい部位では、歯ぐきのラインが崩れると人工歯を装着したあとの仕上がりに差が出てしまいます。抜歯即時インプラントは骨吸収と同時に歯ぐきの退縮も抑えやすく、自然な歯ぐきのラインを保ったまま治療を進めやすい点が評価されています。
通常のインプラント治療では、骨にアクセスするために歯ぐきを切開する必要があります。一方、抜歯即時インプラントは抜歯窩をそのまま活かしてインプラント体を埋入するため、歯ぐきの切開を最小限に抑えられるケースが多くあります。切開や縫合の範囲が小さくなれば、術後の腫れや痛みも軽くなりやすく、回復が早いという声も多く聞かれます。
従来法では治癒待ちの期間に「歯がない状態」で過ごさなければならず、人前で口を開けにくいといった精神的なストレスを感じる方もいらっしゃいます。抜歯即時インプラントでは、状態が良ければ手術当日に仮歯まで装着できるケースもあり、見た目の回復が早い点は大きな利点です。仕事や接客の都合上、歯がない時期を作りたくない方に向いた治療法と言えるでしょう。
参照元:公益社団法人 日本口腔インプラント学会(https://www.shika-implant.org/)
抜歯即時インプラントには多くのメリットがある一方で、術式の特性上、注意しておきたいデメリットもあります。治療を検討する際には、利点と欠点の両方を理解したうえで判断することが重要です。
抜歯即時インプラントは、抜歯による傷が完全に治る前にインプラント体を埋入する術式のため、通常のインプラント治療よりも細菌感染への注意が必要です。感染が起きるとインプラント周囲に炎症が生じ、骨との結合が得られないままになる可能性もあります。手術環境の徹底した滅菌や術後の抗菌薬の処方など、感染対策に力を入れている歯科医院で受けることが望まれます。
抜歯即時インプラントは、すべての患者さんに適用できる治療法ではありません。骨量や歯ぐきの状態、咬合の状況など、いくつもの条件を満たす必要があります。特に、抜歯の原因が重度の歯周病である場合は、周囲の骨が大きく失われていることが多く、抜歯即時インプラントが選択できないこともあります。事前の検査で適応かどうかを慎重に判断する必要があります。
抜歯即時インプラントは、抜歯時に周囲組織を傷つけずに丁寧に処置する技術や、抜歯窩の状態を見極めながら正確な位置にインプラント体を埋入する判断力が求められます。通常のインプラント治療よりも難易度が高く、対応している歯科医院は全国的に見てもまだ限られているのが現状です。経験や設備が整った歯科医院を探すうえでは、事前の情報収集が欠かせません。
インプラント治療はもともと自由診療のため公的医療保険が適用されず、抜歯即時インプラントも自費診療となります。骨量が不足している場合は骨補填材の使用や骨造成の処置を併用することがあり、その際は通常のインプラント治療より総額が高くなる可能性があります。事前に費用の見積もりを確認し、追加処置の発生条件も合わせて把握しておくと安心です。
抜歯即時インプラントの当日に仮歯まで装着した場合、インプラント体と骨の結合が完成するまでの一定期間は、装着部位に強い力をかけないよう気を付ける必要があります。具体的には、硬い食べ物や粘り気の強い食品を避け、反対側の歯で噛むようにするといった配慮が必要です。喫煙や過度の飲酒も治癒に影響するため、控えるよう指導されるのが一般的です。
参照元:厚生労働省 e-ヘルスネット(https://www.e-healthnet.mhlw.go.jp/)
抜歯即時インプラントを安全に行うためには、複数の適応条件をクリアしている必要があります。ここでは事前の検査でチェックされる主な5つの観点を解説します。
インプラント体をしっかり固定するには、埋入する部位の周囲に十分な顎の骨が残っていることが大前提です。骨の厚みや高さが不足していると、初期固定が得られず、インプラント体が安定しない可能性があります。また、抜歯窩の周囲に骨の壁がある程度残っていることも重要で、外側の骨壁が大きく失われている症例では、抜歯即時インプラントが難しいと判断されることもあります。
抜歯する歯やその周囲組織に活動性の感染がある場合、そのままインプラント体を埋入するとインプラント周囲炎の引き金になりかねません。感染が確認されたときは、まずはその部位の治療を行い、炎症が落ち着いてからインプラント治療の可否を再判断するのが一般的な流れです。事前のレントゲンやCT検査で慎重に評価されます。
重度の歯周病が進行していると、歯を支える骨が大きく溶けてしまっており、インプラント体の安定が得られない場合があります。また、隣接する歯に大きな虫歯があると、その虫歯から細菌が広がりインプラント部位の感染リスクが高まる懸念もあります。軽度の歯周病であれば治療と管理を行うことで治療を進められる場合もありますが、まずは口腔内全体の健康状態を整えることが優先されます。
噛み合わせのバランスが大きく崩れていたり、歯ぎしりや食いしばりの癖が強かったりすると、埋入直後のインプラント体に過度な力がかかり、オッセオインテグレーションが得られなくなることがあります。咬合検査で問題が確認された場合は、まずナイトガードの使用や咬合調整を行い、力のコントロールができる状態にしてから抜歯即時インプラントを検討することになります。
糖尿病・高血圧・骨粗しょう症など、傷の治りや骨の代謝に影響する持病がある方は、まず内科でのコントロールが優先されます。血糖値が高いまま手術を行うと感染リスクが上がり、インプラントと骨の結合にも影響を及ぼす可能性があります。喫煙習慣も同様に治癒を妨げる要因のため、術前から禁煙が推奨されることが多くあります。
参照元:公益社団法人 日本口腔インプラント学会(https://www.shika-implant.org/)
抜歯即時インプラントの治療は、検査・診断から最終的な人工歯の装着まで、いくつかの段階を踏んで進みます。ここでは一般的な治療の流れを4つのステップで整理します。
最初に問診とレントゲン、歯科用CTなどによる精密検査を行います。CTでは顎の骨の厚みや高さ、神経や血管の位置を立体的に把握し、抜歯即時インプラントが適応できるかどうかを判断します。検査結果をもとに歯科医師が治療計画を作成し、治療内容・期間・費用・想定されるリスクなどを患者さんに説明したうえで、同意を得てから手術日が決められます。
手術当日は局所麻酔をしたうえで、対象の歯を抜歯します。抜歯後の抜歯窩を丁寧に洗浄・消毒し、感染源となる組織が残らないように処置したあと、計画した位置と角度でインプラント体を埋入します。骨とインプラント体の間に隙間がある場合は人工骨や骨補填材で隙間を埋めることもあります。状態が良ければ仮歯やヒーリングキャップを装着し、その日の手術が終了します。
インプラント体と顎の骨が結合するまで、おおむね3〜6ヶ月の待機期間を設けます。下顎よりも上顎のほうが骨の密度が低いため、待機期間がやや長くなる傾向があります。この期間中も歯科医院に通い、傷口や周囲の骨の状態を経過観察していきます。仮歯を装着している場合は、強く噛みすぎないよう日常生活で配慮することが必要です。
インプラント体と骨の結合が確認できたら、最終的な人工歯(上部構造)の型取りを行います。完成した上部構造をアバットメントを介してインプラント体に取り付け、噛み合わせや見た目の調整を経て治療が完了します。その後はインプラントを長持ちさせるために、定期的なメンテナンスを継続することが推奨されています。
参照元:公益社団法人 日本口腔インプラント学会(https://www.shika-implant.org/)
抜歯即時インプラントは自由診療のため、費用は歯科医院ごとに設定が異なります。ここではおおまかな目安と、追加費用が発生しやすいケースを整理します。
抜歯即時インプラントを含むインプラント治療は、1本あたりおおむね30万〜50万円程度が相場とされています。前歯と奥歯の費用差は大きくありませんが、前歯は審美性が重視されるため、被せ物の素材選びによって費用がやや上振れする傾向があります。記載されている金額に検査費や上部構造費が含まれているかは歯科医院ごとに異なるため、見積もりを取る段階で「総額でいくらになるか」を確認しておくと安心です。
顎の骨量が不足している場合は骨補填材の使用や骨造成の処置が併用され、おおむね5万〜30万円程度の追加費用が見込まれることがあります。手術への不安が強い方が静脈内鎮静法(点滴で意識を穏やかに保つ麻酔)を希望する場合は、3万〜10万円程度の上乗せが一般的です。また、上部構造に高審美性のセラミックを選ぶと費用が高くなります。インプラント治療は医療費控除の対象になるため、確定申告で費用負担を一部軽減できる点も合わせて確認しておきましょう。
参照元:国税庁 医療費控除の対象となる医療費(https://www.nta.go.jp/)
インプラント治療には複数の術式があり、抜歯即時インプラントもそのうちの1つです。混同されやすい治療法との違いを整理しておくと、自分に合った選択肢を判断しやすくなります。
インプラント体を埋入するタイミングによって、術式は次の4つに分類されます。1つ目の「抜歯即時埋入」は、抜歯と同日にインプラント体を埋入する方法です。2つ目の「早期埋入」は、抜歯から4〜8週ほど経過し、歯ぐきが治癒したタイミングで埋入する方法で、感染リスクを抜歯即時より下げられる点が特長です。3つ目の「遅延埋入」は、抜歯後3〜4ヶ月で骨の治癒途中に埋入する方法、4つ目の「待時埋入」は、抜歯後4ヶ月以上経って骨がしっかり治ったタイミングで埋入する従来法的な方法です。骨や歯ぐきの状態に応じて、最適なタイミングが選択されます。
抜歯即時インプラントは「埋入のタイミング」を指す概念であるのに対し、即時荷重インプラントは「埋入後すぐに仮歯などを装着して機能させるかどうか」を指す概念です。両者は両立することもあり、抜歯即時で埋入し、その日のうちに仮歯まで装着するケースも実際に存在します。一方で、初期固定が十分に得られない場合は、抜歯即時で埋入してもすぐには荷重をかけずに治癒を待つ方針が取られます。
歯を失った場合の治療法には、インプラント以外に入れ歯やブリッジという選択肢もあります。入れ歯は外科手術が不要で短期間に装着できる一方、噛む力や装着感はインプラントに比べて劣る傾向があります。ブリッジは固定式で噛み心地は安定するものの、両隣の健康な歯を削る必要があります。抜歯即時インプラントは隣の歯を削らずに、自然な噛み心地を比較的早く回復できるバランスの良い治療法と位置づけられます。
参照元:公益社団法人 日本口腔インプラント学会(https://www.shika-implant.org/)
抜歯即時インプラントは難易度の高い術式であるため、治療結果は歯科医院の体制によって左右されやすい治療です。ここでは判断材料となる3つの観点を紹介します。
抜歯即時インプラントを安全に行うには、歯科用CTによる立体的な骨の評価と、それに基づく緻密な治療計画が欠かせません。サージカルガイド(手術用のマウスピース型のガイド)を活用しているかどうかも、埋入精度を左右する判断材料になります。設備の充実度は歯科医院のホームページで確認できることが多くあります。
抜歯即時インプラントは感染対策がとくに重要な術式です。専用のオペ室を備えているか、滅菌器の運用体制が整っているか、使い捨て器具を採用しているかなど、衛生管理の水準を確認しておくと安心です。歯科医院によっては、手術環境を写真や動画で公開している場合もあるため、事前に目を通しておきましょう。
インプラント治療は経験を積むほど精度が上がる治療と言われています。抜歯即時インプラントの症例数や、対応してきた症例の難易度、所属している学会など、歯科医師の経歴を確認することは判断材料の一つです。カウンセリング時にメリット・デメリットを丁寧に説明してくれるかどうかも、信頼できる歯科医院を見極める手がかりになります。
参照元:公益社団法人 日本口腔インプラント学会(https://www.shika-implant.org/)
最後に、抜歯即時インプラントを検討中の方からよく寄せられる質問とその回答を整理します。
手術中はしっかり局所麻酔が効いているため、強い痛みを感じることはほとんどありません。術後は抜歯後と同程度の鈍い痛みが出る場合がありますが、処方される鎮痛剤で対処できるケースが大半で、歯ぐきの切開が少ない分、通常のインプラント治療と比べると痛みや腫れは軽い傾向にあります。
抜歯から時間が経っている場合は抜歯即時インプラントの適応外となりますが、待時埋入によるインプラント治療は十分に検討できます。骨が痩せていれば骨造成を併用するなど、検査結果をもとに状態に応じた術式が提案されます。
症例によって幅はありますが、抜歯即時インプラントの場合は手術日から人工歯の装着までおおむね3〜6ヶ月程度が目安です。下顎は3〜4ヶ月、上顎は4〜6ヶ月と、骨密度の差で待機期間に違いが出ます。
適応条件を満たした症例での成功率は90%以上と報告する臨床研究が多くあります。一方で症例選択を誤ると失敗率が上がるという報告もあり、CT検査による事前の見極めと経験豊富な歯科医師による施術が成功の鍵となります。
参照元:公益社団法人 日本口腔インプラント学会(https://www.shika-implant.org/)
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